子どもの声

子どもからのメッセージ [劇あそび]真面目の中に楽しさが

この時期、多くの幼稚園や保育園では楽しいクリスマス会やお楽しみ会が開かれ、子どもたちも大喜びだったことと思います。
でも、こうした場で、最近、困ったことがあります。
会の中で、楽しい職員劇やサンタクロースの訪れがあるのはいいのですが、すぐにふざけたことをして子どもの笑いを取ろうとする傾向があるということです。
特に若い先生が多い園でよく見られます。

たとえばマッチ売りの少女がとてもおてんばだったり、それを男性保育士が演じたり、子どものイメージを壊す、ふざけるだけのサンタクロースが出てきたり……。
いずれも子どもを楽しませるためのことでしょうが、子どもはそれで笑ったとしても、それはその滑稽さに笑っただけです。
くすぐられたから笑ったようなものです。

子どもは、無理に笑いを誘う仕立てにしなくても、先生方が普通に劇をしてくれるだけで、十分に楽しく、声を出して笑ったり笑顔になったりします。
いや、むしろ自分の知っている通りに劇が進んでくれることを望み、それでこそ安心するところがあります。

サンタクロースはふざけなくても、普通に出てくるだけで子どもは笑顔になるのです。
「マッチ売りの少女」を見て、ばか笑いをしたいなどとも思っていません。
明らかに女性が演じるべきものを男性が演じると、3歳の子どもでも不自然に思います。
職員全員が男性ならともかく、わざわざそうする必要はないはずです。

[劇あそび]真面目の中に楽しさがある保育園で、おおかみを蹴飛ばすおてんばの赤ずきんちゃんが出てくると、見ていた子どもの中から「違うでえ」という声が上がりました。
私はそれが、
「赤ずきんちゃんはそんなんじゃないでしょ、もっとやさしいでしょ。先生、ふざけないでやってよ」
という声に聞こえました。

原作から離れたお笑い版は、元のストーリーをもう何十回も見て飽きた大人が喜ぶスタイルです。
きちんとした原作をまだ1回も見ていないかもしれない年齢の子どもには、見せるべきではないと思います。
子どもは、なんでもない、ごく普通のものの中に、楽しさや面白さを見いだす力をもっています。
そこが子どもの素晴らしいところです。

子どもと人形劇を見に行ったりするとよくわかりますが、子どもはまず人形が登場するだけで笑います。
何もしなくても、それだけでうれしいのです。
楽しいのです。
大人はすぐに、子どもに「マジメにしなさい」と言いますが、それはそのまま子どもが言いたいことかもしれません。

近ごろ、何でも普通に真面目にやることが敬遠されがちな世の中になってしまいましたが、笑顔や笑いは、「普通」や「真面目」の中にこそたくさんあることを、子どもたちから教わったような気がします。



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