子どもからのメッセージ [親への質問]ふれあいタイムの始まり
「ねえママ、次の駅はなあに?」
「次は○○よ」
「じゃあその次は?」
「××よ」
「じゃあ、その次は?」……。
電車に乗っているとよく、そういう会話を交わしている親子を見かけます。
何十年前から見られる、実にほほ笑ましい光景です。
子どもは、駅に名前がついていることが不思議でおもしろいのでしょう。
でも、聞かれた方のお母さんも困っています。
二つ三つ先くらいまでなら言えるでしょうが、その先になると、もうわからなくなってしまいます。
最初こそ「○○よ」とやさしく教えていた母親も、たいていは四つ目くらいで「もういいの!」と。
私は、子どもが親に駅の名前を次々と聞いていくのは、本当は駅の名前を知りたいのではなく、自分の問いかけに、嫌がらずにやさしく答えてくれる、親ならではの「愛情」がほしいからのような気がします。
駅名なんて、どうでもいいのです。
親に甘えたいのです。
だから、本当は知っているのに聞きにきたりすることもあります。
そもそも子どもは、自分が大好きな人、あるいは自分を心から受け入れてくれる人にしか、質問というものをあまりしないものです。
子どもが大好きな人、そして自分を心から受け入れてくれる人……、それはやはりお母さん、お父さんです。
だから、お母さんお父さん以外の人と電車に乗っているときは、次々と駅名を聞いていくなんてことは、めったにないはずです。
自分の大好きなお母さんお父さんが答えてくれるのがうれしいのです。
子どもが親に駅名を聞いていく理由は、もうひとつ。
それは、そこから心地よい「親子のふれあいタイム」が始まるということです。
子どもは、駅名を話題にすれば、
「ほら、もうすぐ次の駅よ」
「次の駅はなんて書いてあるかなあ」
などと、子どもにとっては実にうれしい「親子の会話」が始まり、「自分が愛されていることの証し」を確認することができるのです。
そのきっかけを自分でつくろうとしているのです。
駅名に限らず、子どもが親によく質問をするのもそこだと思います。
その質問が何であれ、質問したことをきっかけにして、そこから親の愛情の匂いがプンプンする、子どもにとっては、実に心地よい会話が始まりやすいことを、子どもは知っているのです。
もしも電車の中で、子どもから次々と駅名を聞かれたときは、たとえわからなくても、もう決して「知らない!」とか「もういいの!」とかは言わないでください。
「お母さん、わからないから駅に着いたら一緒に見てみようね」
「その次はなんていう駅かなあ、楽しみね」
など、それをスタートにして、子どもの期待通り、笑顔のふれあいタイムの始まりに、ぜひしていってほしいと思います。