子どもからのメッセージ [子どものことば]ありのままを認めよう
もしも今、「尊敬する人は誰ですか?」と聞かれたら、私は迷わず「それは子どもたちです」と答えます。
私が子どもたちをもっとも尊敬するところは、自分のまわりのものすべてを丸ごと受けとめ、決して文句を言わないということです。
たとえば、子どもたちは自分の家がどんなに小さくても、どんなに駅から遠くても、大人と違って決して文句を言いません。
また、家庭がどんなに貧乏でも、仮に親がとんでもないやり方で子育てをしていても、文句を言わないどころか、その家庭を、親を、大好きであったりします。
我慢しているのではありません。
不満に思わないのです。
ありのままを受け入れ、認めているのです。
一方、私たち親はどうでしょう。
毎日、子どもに文句ばかり言っていませんか。
考えてみると親は、子どものすることはもちろん、子どもが何げなく発した言葉にさえ、いちいち文句を言ってしまいがちです。
たとえば、子どもが熱いお茶を飲んで、「あつっ!」と言っただけで、「フーフーしないからでしょ!」と叱ったり、散歩中、寒くなって子どもが「さむ〜い!」と言っただけで、「どうして上着を着てこないの!」と叱ったり。
子どもは別にそれでどうこうしてほしいなんて、ひと言も言っていません。
ただ熱いから「熱い」、寒いから「寒い」と言ったのです。
こけて痛いから「いたーい!」と言うと、「痛くない痛くない!」と言われ、歩いて疲れたから「つかれた〜」と言っただけで叱られ……。
子どもは単に、感じたことや今の気持ちを言っただけで、認めてもらえるどころか叱られてばかりいます。
「そんなとき、いちいちやさしい言葉なんてかけられない」という人もいます。
でも、考えてみてください。
たとえば近所の奥さんが「寒いですねえ」と言ったとき、決して「どうして上着を着てこないの!」とは言いません。
「ホントですねえ」と同調し、笑みを返します。
喫茶店でお茶を飲んだ友人が「熱ッ!」と言うと、「ちゃんと冷まさないからでしょ!」とは言わず、「やけどしなかった?」と尋ねています。
一緒に歩いていた仲間がこけて「痛い!」と言うと、「痛くない痛くない!」とは言いません。
たいていは「大丈夫?」と聞きます。 そういうとき、相手にどう言えばいいかは、ちゃんとみんなわかっているのです。
子どもにはいつもやさしい言葉を、と言っているのではありません。
ただ認めるだけでいいのです。
「ほんとう」のひと言でいいのです。
「大丈夫?」でいいのです。
それでこそ、子どもは我慢することを覚えます。
子どもの顔にも心の中にも、ニコニコ笑顔が出てきます。
親子の「いい関係」は、お互いに丸ごと認め合う中から育っていくような気がします。